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  • 文学部哲学科
  • 美術史学専攻

皿井 舞 SARAI Mai

日本美術史 / 教授

主要著書

主要著作:『天皇の美術史Ⅰ 古代国家と仏教美術』(吉川弘文館、2018年)、『古代史をひらく 国風文化』(岩波書店、2021年)ほか。

研究分野

日本美術史のなかでも、主に日本彫刻史を研究しています。日本の寺院に安置されている、礼拝対象である(礼拝対象であった)仏像が研究対象です。

過去につくられた造形物が、はるかな時を超えて、現代を生きるわたしたちの心を打つことに素朴な感動を覚え、大学ではそうした造形物をあつかう美術史学を専攻することを決めました。研究対象を仏像にしぼるまでは、欧米、中近東、中国など海外の美術館や史跡をめぐりました。いわゆるバックパッカーでしたが、結局、生まれ育った環境のなかで常に身近だった仏像に落ち着くこととなりました。

仏像の研究というのは、いつ、誰が、どうやって、何のためにつくったのか、また現在に至るまでどのような人に大切にされてきて、どのような威力を発揮すると信じられていたのかという、仏像に限らず、美術史学で扱う対象のアプローチとして一般的ですが、いわば仏像のプロフィールをつくる作業です。仏像そのものを調査して情報を引き出すのが基本ですが、それだけではなく史料にあたったり、仏像の安置されている場に身を運んで情報収集したり、さまざまな角度から検証をします。

仏像の調査は、だいたい夏の暑い時期か、冬の寒い時期が多く、拝観時間を避けての調査となると早朝や夜間の調査もあります。体力勝負の研究分野ですが、ほかの人が体験できないような、忘れられない瞬間を手に入れることができるのも、この研究分野の醍醐味です。ある寺院の早朝調査の際、有名な僧侶の像が安置されている厨子の扉を、特別に開けていただくことがありました。堂内にさし込んだ朝日の光が厨子内を照らし出すと、まるで本当に生きている僧侶が座っているかのような感覚におそわれました。仏像を見る「光」にも注意を払わないといけないと気付いた瞬間でもありました。

これまでの職場

東京文化財研究所に13年間、東京国立博物館に5年間、勤めました。日本の文化財の科学的な調査を牽引してきた東文研では、文化財の科学的調査の基本のきを日常業務のなかで学ぶことができました。また人文学のなかでいちはやくデータベースの作成に着手したのも文化財研究所でした。先輩方が牽引した情報の収集、蓄積、活用という今では当たり前に知られている「アーカイブ」という営みにどっぷりとつかった日々でした。

東博では5年間で展覧会を8件担当しました。毎日が文化祭のような目まぐるしい毎日でしたが、同時に作品に接する幸せを噛み締めた日々でした。展覧会の裏側の苦労も含めて、これまでの体験をひっくるめてお伝えできればと思います。

学生の皆さんへ

美術史学を専攻した皆さんは、博物館や美術館、あるいは寺院などに足しげく通うことになると思いますが、こうした授業を通して、あるいは学生生活を通して、多くの体験をしてみてください。美術作品に限らず、演劇、映画、音楽、何でもいいと思いますが、五感をとおして得られた体験は、説得力がまったく異なります。体験は、人生の引き出しを多くして、人生を豊かに彩ってくれることになるでしょう。

ちょっと?人生の先輩である教員が、皆さんの背中を押して一歩前に足を踏み出すための手助けができれば幸いです。

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