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  • 文学部哲学科
  • 美術史学専攻

京谷 啓徳 KYOTANI Yoshinori

西洋美術史 / 教授

主要著書

『ボルソ・デステとスキファノイア壁画』(中央公論美術出版、2003)、『もっと知りたいボッティチェッリ』(東京美術、2009)、『凱旋門と活人画の風俗史 儚きスペクタクルの力』(講談社選書メチエ、2017)、『西洋美術の歴史4 ルネサンスI』(共著、中央公論新社、2016)、『浅草オペラ 舞台芸術と娯楽の近代』(共著、森話社、2017)

研究分野

イタリア・ルネサンス美術を中心として西洋美術史を研究しています。学生時代は、ある君主の注文で描かれた宮殿壁画に、彼の思いがどのように映し出されているかということを研究して、博士論文を書きました。君主に仕えた画家のことを宮廷画家といいます。実は当時の宮廷画家の仕事は多岐にわたり、ほとんど何でも屋のようなもので、祝祭の時の山車や仮設建造物のデザイン・制作も手がけていました。そこから私の関心は、次第にルネサンスの宮廷祝祭にも広がっていきました。後世にまで残る絵画や彫刻と、一時的に使用されては消えてゆく仮設の美術、それらの総体としてのルネサンス美術の実態を明らかにしていきたいと考えています。

また、イタリア・ルネサンスとはまったく関係のない、もう一つの専門として、私は近代芸能史にも関心を持っています。大正時代の浅草オペラや昭和初期のエノケン映画、あるいはSPレコードの文化といったものに興味があり、講義を行ったり、文章を書いたりしています。

ルネサンス美術研究と芸能研究は無関係と言いましたが、この二つをつなげてくれる、私の第三の研究対象が「活人画」です。活人画とは、人が衣装を身に着け、静止した状態で絵画を再現するパフォーマンスのことです。ルネサンス宮廷の祝祭でしばしば用いられた活人画は、その後も連綿と受け継がれ、明治時代には日本にも移入されます。いわゆるコスプレは、活人画の現代的な展開ということもできます。活人画はまさに、美術と芸能・演劇のはざまに位置するものなのです。

私の授業

現在私たちが芸術作品と考えている絵や彫刻は、ずっと昔からそうであったわけではありません。特に「芸術」という考え方が成立するより以前のルネサンスの時代においては。私の授業では、ルネサンス時代の絵画や彫刻が、もともと何だったのかを考えてみたいと思います。どのような場所で、どのような人々に眺められていたのか。どのようなメッセージを発信していたのか。考えるべきことはたくさんあります。

美術史という学問には、どこか雑学的なところがあります。作品が描かれた時代の歴史も調べなくてはなりませんし、作品が置かれていた町のこと、絵を見ていた人々の生活についても知る必要があります。また様々な芸術との関連も気になってきます。同じ主題が文学になったり、オペラになったり、映画になったり。私たちは美術作品を追いかけて、時空の旅をすることになります。実際に現地に赴くこともありますし、文献上で旅をすることもあります。美術作品から出発して、周辺の様々なものを調べ尽くして、また美術作品に戻ってくる。その時には、最初には見えなかったものが見えているはずです(もちろん最初に見えたものも大切です)。

私の授業では、皆さんに美術作品との付き合い方を学んでもらいたいです。美術だけではありません。音楽や映画や舞台や、さまざまな芸術に触れるきっかけをつかんでほしいとも思います。時間のある若いうちに、芸術との付き合いに慣れておきましょう(特に古典と言われているもの)。

私の趣味

芝居見物です。劇場という場所自体が好きです。歌舞伎やオペラを中心にいろいろ見歩いてきましたが、最近は大衆演劇にはまっています。

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